遊女と船頭の悲恋を
静かに語る港の地蔵
石川県志賀町・福浦港に佇む「腰巻地蔵」は、北前船の寄港地として栄えた時代に生まれた切ない伝説を今に伝えるスポットです。
昔、福浦港には船宿や遊郭が並び、旅立つ船頭に恋をした遊女がいました。出港の時、別れを惜しんだ遊女が自分の腰巻を地蔵に掛けると、たちまち海は荒れ狂い、船は出港できなかった――そんな言い伝えが残っています。
この地を訪れた詩人・野口雨情も「能登の福浦の腰巻地蔵は、けさも出船をまた止めた」という歌を詠み、その歌碑が地蔵のそばに寄り添っています。
腰巻地蔵が立つ場所は、新福浦灯台の横に位置し、日本海を一望できる絶景の岬です。かつて北前船が往来した港の面影を感じながら、静かな海風に包まれるひとときは、能登ならではのロマンを漂わせます。近くには旧福浦灯台もあり、福浦港の歴史散策とあわせて訪れるのがおすすめです。





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